生命保険でお金を借りる「契約者貸付」って何?返済できないとどうなる?

生命保険でお金を借りる「契約者貸付」って何?返済できないとどうなる?

夫婦と子供2人が手をつなぐシルエットと聴診器とハート

生命保険でお金を借りる「契約者貸付」とは?返済できない場合は?

日本は保険大国と言われるように、1世帯当たりの保険料負担が諸外国よりも高い水準になっています。中でも、生命保険の占める割合は大きく、家計を切り詰めて保険料を払っている方もいらっしゃることでしょう。

そんな生命保険には、保険契約者がお金を借りることができる「契約者貸付」という制度があります。もちろん利用条件はありますが、うまく利用すればクレジットカードやカードローンを利用して借り入れをするよりも有利な条件で借り入れが可能です。

そこで今回は、生命保険の契約者貸付制度の概要と、契約者貸付制度を利用する上で注意したいポイントについてご紹介します。

契約者貸付はどんな制度?

契約者貸付とは、端的に言いますと「生命保険の解約返戻金を担保にお金を借りられる制度」のことです。解約返戻金の前借りと言い換えると分かりやすいかもしれません。

解約返戻金とは

まず「解約返戻金」とは何かを理解する必要があります。

解約返戻金とは、保険への加入を途中で辞めたときに返ってくるお金のことを指します。

終身保険や養老保険、個人年金保険、学資保険など、死亡や満期年齢に達するなどの一定の条件を満たせば必ず保険金がもらえる保険の場合、毎月の保険料の中から保険会社が責任準備金として積み立てをしています。契約している保険を途中で解約した場合、責任準備金から経費を差し引いた残りの金額が解約返戻金として戻ってくるのです。

定期保険、医療保険、ガン保険などのいわゆる掛け捨て型の保険については、もともと解約返戻金がありません。

ただし、掛け捨て型の保険であっても特約で何らかの積み立てをしている場合は、解約返戻金を受け取れるケースもあります。

また、終身保険などでも保険料を抑えている低解約返戻金型の保険などは、一定の年数が経過するまでほとんど解約返戻金が発生しない場合があります。

すでに契約している保険がある場合、保険証券を見れば解約返戻金があるかないか、またどの時点でいくらの解約返戻金がもらえるか確認することができるため、一度ご自身でチェックしてみてください。証券の見方が分からなければ、保険会社に電話で問い合わせると良いでしょう。

契約者貸付制度を利用するためには?

契約者貸付制度を利用したい場合、大前提として解約返戻金のある保険に加入している必要があります。また、契約者貸付で借り入れできる金額は、保険会社によっても差はあるものの解約返戻金の70~90%とされています。つまり、保険加入から間もない時期など、解約返戻金が積み立てられていないと、契約者貸付を受けることができません。

また、契約者貸付制度を利用できるのは保険契約者本人に限られます。他人の解約返戻金をアテにして借り入れをすることは当然ながらできませんのでご注意ください。

借入時に審査は不要

契約者貸付制度は解約返戻金の前借りだとご紹介しましたが、自分の資産を担保にした借り入れのため、保険会社からすると貸し倒れのリスクがありません。そのため、通常の借り入れと違い、利用に際して審査を経る必要がないのです。

利用を希望する場合は、事前に申し込み手続きが必要ですが、審査に落ちる心配がないため、資金計画を立てる上では非常に有効な手段だと言えるでしょう。

契約者貸付の金利・限度額は?

契約者貸付を利用する場合の金利はいくらになるのでしょうか。また、利用の限度額はどのように定められているのでしょうか。ここでは、契約者貸付の金利と限度額についてご紹介します。

契約者貸付の金利

契約者貸付に適用される金利は、保険会社が定める「予定利率」に1~2%程度上乗せした金利とされることがほとんどのようです。

予定利率とは、保険会社が保険契約者から集めた保険料を運用するときに約束する運用利回りのことを言います。予定利率が高いほど解約返戻金は高くなり、保険料は安く抑えられます。そのため、保険としては予定利率の高いものの方が優れていると言えるでしょう。

この予定利率は、国が定める標準利率を参考に、各保険会社が自由に定めることができます。したがって、同時期に契約したとしても、保険会社や保険の内容によって利率は異なります。また、同じ保険会社の同じ保険商品であっても、契約時期が違うと、予定利率が異なる場合もあります。

バブル期に契約されたものは、「お宝保険」と表現されることもありますが、それはバブル期の予定利率が今では考えられないくらい高い数字だからです。

しかし、予定利率が高いほど契約者貸付の貸付金利が高くなってしまうため、話を契約者貸付に限って言えば、予定利率は低い方が有利だと言えます。現在の保険では、おおよそ金利は3~4%程度ですが、複利で適用される点には注意が必要です。

とはいえ、契約者貸付の金利は、クレジットカードのキャッシング、消費者金融、銀行のカードローンと比較して低い利率になっています。契約者貸付を利用できるのであれば、カードローンよりも有利に借り入れすることができるかもしれません。

契約者貸付の貸付限度額

契約者貸付の貸付限度額は、保険会社によって異なりますが、おおよそ解約返戻金を2~3割程減額した金額が目安となります。例えば、解約返戻金が100万円だとすれば、貸付限度額は70~80万円とされていることが多いようです。

限度額の範囲内であれば、申し込み手続きは必要ですが、審査を経る必要はありませんので、必要に応じて自分の意志で自由に利用することができます。

必要な資金が契約者貸付制度の上限よりも多い場合は、いったん上限額まで契約者貸付で借り入れ、超過する分をカードローンなどで補うと良いかもしれません。

契約者貸付の返済方法

返済方法は保険会社によって異なりますが、契約者貸付の特徴として返済期限が定められていないため、利用者が自由に設定することができます。

以下でご紹介するのは返済方法の一例です。保険会社によって返済方法が異なる場合があるため、詳しくは加入されている保険会社のホームページをご覧ください。

元金・利息を一括返済

電卓で計算する男性

借り入れた元金と、借入期間に応じて発生した利息を一括で返済することができます。返済予定表などはないため、返済時にいくらの利息が発生しているかについては、保険会社のコールセンターに問い合わせたり、専用サイトで借入金の状況を見たりして確認する必要があります。

なお、返済方法は銀行振り込みや、コンビニ払いなど、保険会社によってさまざまです。コンビニ払いの場合は、払込票を保険会社から送ってもらう必要があります。

返済を複数回に分ける

1万円札の枚数を数える人

返済は一括返済でなくても問題ありません。借入金のうち、一部を返済することも可能です。その際、毎回違う金額を指定して返済しても構いません。

ただし、1回の返済につき最低いくら以上(1,000円以上など)と条件が定められている場合もあるため、条件がある場合はルールに従う必要があります

元金・利息を決まった金額で返済

31日に丸が付けてあるカレンダー

返済額は定められていませんが、自分で金額を一定にして返済することも可能です。毎月末日に5,000円、1万円など、ルールを自分で決めておくことで、返済計画も立てやすく家計の管理もしやすいのではないでしょうか。

また、手続きをしておけば、毎月(もしくは半年ごと、1年ごとに)一定額を引き落とししてもらうことも可能です。これも保険会社によっては最低返済金額が1万円以上などと、条件が定められている場合がありますので、あらかじめ確認するようにしましょう。

なお、一部返済の場合、通常は返済額が元金と利息で案分されることになります。

利息のみを先に返済

男性が利息をスマホで確認しているイメージ

1年分の利息をまとめて支払うことも可能です。この場合、利息はいったんなくなりますが、元金は減りませんので、また新たに利息が発生することになります。

利息のみを先に返済することで、後述するように、複利効果で借入金が膨らむのを抑制することが可能です。借り入れが長期にわたる場合は、保険が失効することを防ぐためにも、1年ごとに利息を精算すると良いでしょう。

返済期限が定められておらず、返済を催促されないということは、利用者が強い意志や計画性を持たないことには返済が進まないというリスクを抱えることになります。返済しないまま放置することによるデメリットは次項でご紹介しますが、この点をしっかりと理解しておきましょう。

生命保険でお金を借りる上で注意したいポイント

通常のカードローンと比較して金利が低く、かつ返済も自分の都合に合わせられるというメリットの多い契約者貸付制度。では契約者貸付でお金を借りる際、どのような点に注意すべきなのでしょうか。

複利が適用されるため、返済額はどんどん増えていく

時間とともにお金が増えていくイメージ

契約者貸付での借入金には、複利が適用されます。複利とは、元本と利息の合計額に、さらに利息がかかっていく仕組みで、多くの保険会社では1年複利とされています。

つまり、借入金額が50万円、貸出利率が4%、借りてから返済しないまま放置したとすると、1年後の時点では2万円の利息が付くことになり、元利合計は52万円。2年後はこの52万円に4%の利息が付くので、利息は2万800円、元利合計は54万800円、同じように3年後は元利合計56万2,432円と、年々利息の増え方が大きくなっていきます。

契約者貸付は、返済期限がないからと安心して返済しないままにしていると、利息がかさみ返済額がどんどん膨らんでいってしまう点に注意が必要です。

返済方法の項でご紹介した「利息のみを先に返還」というのは、この複利効果を抑える意味でも有効ですので、元金が返済できない状況の場合、利息のみ少しずつ返済していくことをおすすめします。

返済できないと保険自体が失効してしまう場合がある

空っぽの財布

返済期限がないため、返済しないままでいると、上記の通り利息がかさんでしまいます。その結果、借入金が解約返戻金を上回り、保険契約が失効してしまうのです。

仮に、解約返礼金が100万円、貸付上限が80万円、貸出利率が4%、1年複利だったとしましょう。この契約で上限金額の80万円を借り入れ、返済しないまま放置してしまうと、1年後に元利合計は83万2,000円、以下86万5,280円、89万9,891円、93万5,886円、101万757円と、5年後の時点で解約返戻金を上回ってしまいます。

借り入れ元利金が解約返戻金を上回った時点、もしくはその可能性が出た時点で、保険会社から保険契約者に通知や予告が来て、期限までに一部でも返済するように促されます。そして期限を過ぎると、保険自体が失効してしまいます。

保険が失効すると保障がなくなることはもちろんですが、解約返戻金として返ってくるはずのお金は強制的に元利金の返済に充てられることになり、手元に戻ってこなくなります。

さらに、超過した借入金は債務として残りますので、その分追加で返済しなければなりません。

一定条件のもとに失効した保険を復活させることができる場合もありますが、復活させる場合は借入金を全額一括で返済しなければならないため、現実的にはかなり難しいと言えるでしょう。

保険金などと相殺される

若い夫婦と老夫婦

契約者貸付による借入金が残った状態で保険金支払い事由が発生する(死亡、満期年齢に達するなど)と、支払われるべき保険金から契約者貸付の借入金を差し引いた金額が支払われます。

仮に、死亡保険200万円、契約者貸付の借入金が80万円だったとすると、遺族に支払われる保険金は200万円-80万円=120万円になります。保険金を見込んでライフプランや相続対策を考えている場合、計画通りにいかなくなる可能性もありますので、十分注意が必要です。

契約者貸付は仕組みをよく理解して計画的に利用しよう

今回は、生命保険の契約者貸付制度の概要と、契約者貸付制度を利用する上での注意点についてご紹介しました。

契約者貸付制度は金利も低く、また返済をせかされることもないので、非常に有利な借り入れです。しかし、それは解約返戻金という資産を担保にしたものですので、ある意味当たり前のことかもしれません。自分の資産を前借りしているだけなので、貸し手である保険会社は貸し倒れのリスクがないからなのです。

そうした契約者貸付制度の仕組みをよく理解した上で、うまくこの制度を利用することができれば、通常のカードローンなどよりも有利に金策することができるでしょう。くれぐれも保険が失効してしまうようなことがないように、計画的に利用することをおすすめします。

田中 裕晃
田中 裕晃

ファイナンシャルプランナー
日本FP協会主催「くらしとお金のFP相談室」で平成29年度相談員担当

大手賃貸仲介業者に就職、新人賞獲得。店長職を経験後、売買仲介業者として独立。 その後、創業者杉本雅幸の後継として株式会社大峰の代表取締役に就任、現在に至る。住宅の取得やそれに付随するライフプランニングの設計、資産の組み換え、相続対策などに関しての相談業務を行っている。

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